映画鑑賞記
「おとうと」鑑賞記
優等生の姉・吟子(吉永小百合)と、
できの悪い弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)とのあまりにも不釣り合いな取り合わせ。
これはまさに「フーテンの寅さん」の大阪版といってもいい。
観客も年齢層が高かった。
平均して60歳以上はあったのでは。
途中、お父さんが2回位にトイレに立った。
席の中央に座っていたのだけど、
2回目は手前の観客が席を入れ替えてあげてた。
映画の途中で席を立たないといけないのはなかなか厳しい現実だ。
吉永小百合は「まぼろしの邪馬台国」でも見たが、本当にいい演技をする。
あの時の相手は邪馬台国が九州にあったと信じて疑わない、
情熱家で盲目の夫(竹中直人)だったが、
本当にけなげな女房役を演じていた。
今回はどんなに手がかかる弟でも見捨ることのできない優しい姉だ。
3人兄弟の兄は堪忍袋の緒が切れて最後は兄弟の縁も切ってしまったが。
できの悪い子ほどかわいいというが、
姉にしてみるとできの悪い弟ほどかわいいということか。
でもこれは母性そのものだろう。なかなか男では
ここまではできない。
監督は山田洋次。
すばらしい演出だ。
最後のシーンが泣かせるね。
あのボケた義理の母のセリフ。
民間のホスピスが出てきたが、あのような施設が実際にあるのか。
そこに働く人たちの献身的なサービス。
どんな悪たれ人間でも人生の最終章を、
最高の形で飾らしてあげたいという思いが伝わってくる。
山田監督が描きたかったのは姉弟愛というより人間愛そのものだろう。