映画鑑賞記
「船を編む」鑑賞記
映画「舟を編む」を鑑賞した。
原作は三浦しおんの同名小説。
2012年に本屋大賞第1位を受賞している。
原作を読んだことが無く予備知識も全くなかったので、
変わったタイトルだなという印象があった。
結局、「舟」とは辞書のことで、
「編む」とは編集作業のことだった。
見出し語約24万語。
辞書は、これまでにない新しい概念や言葉を積極的に取り込み、
言葉の海を航海する舟になぞらえ「大渡海」と命名された。
出版の企画が持ち上がったのが1995年、
完成したのが2010年というから大変な作業だ。
主役は馬締光也(まじめみつや)役の松田龍平と林香具矢役の宮崎あおい。
馬締光也は大学院で言語学を専攻した超まじめ人間だ。
玄武書房に入社し営業部に配属されるのだが、
コミュニケーション能力に乏しくまったく受注が取れない。
しかも社内では変人扱い。
そんな中、
同社の辞書編集部のベテラン編集者の荒木(小林薫)の目に止まる。
荒木は間もなく定年を迎えるが、自分の後継者を探していたのだ。
辞書の編集作業はあまりにも地道すぎ、
後継者になる社員が見つからないでいたが、
ようやくふさわしい人間が見つかった。
人の気持ちを的確に表し、
人と人のつながりの手助けをする辞書。
馬締はそんなコンセプトに感銘し転属を引き受けた。
配属後は、お調子者の西岡(オダギリジョー)と組み、
編集作業を開始する。
しかし、あまりにも対照的な二人は会話がまったく噛み合わない。
それでも悪戦苦闘しながら仕事を一つ一つ覚えていく。
馬締は「早雲荘」に下宿しているのだが、
これが昭和時代そのものといったものすごく古い建物だ。
1995年とはいえ、あまりにも古い。
そこに大家のタケと二人で住んでいる。
タケは仕事で悩む馬締を理解し、
厳しくも愛情込めて励ましてくれる。
ある時、タケの孫娘・林香具矢が板前修業のため、
下宿に住み込むようになった。
あまりの可愛さに一目ぼれした馬締が、
候文のラブレターで告白。
驚く香具矢だったが、
馬締の一途さに心打たれ交際を受ける。
その後、香具矢のやさしい励ましに支えながら、
辞書の編集作業は徐々に進んでいった。
しかし、そんな最中に編集中止の話が突然舞い込む。
西岡と馬締は編集局長に必死で継続を頼み込む。
結局は西岡の転部と引き換えに継続が認められるのだ。
あわてる馬締、自分一人では到底完成できるとは思えない。
西岡は、「お前ならきっとやれる」と激励する。
そして約15年かけてようやく完成の日を迎える・・・・。
本作を見てあらためて知ったが、
辞書の編集というのは大変な労作業だ。
特に用例採集(言葉集め)というのに膨大な時間と労力を要する。
一語一語をカードに書き、
その言葉の意味と使用例を併せて書きこんでいくのだ。
言葉の意味も、通り一遍ではなく、
時代の風潮にマッチした的確なものでないといけない。
編集がスタートして10年も経過すると、
時代そのもが変わってしまい、
当初定義した言葉の意味や使い方が変わってしまう。
結局その都度内容を見直さないといけなくなるのだ。
本作はそんな地味な仕事をコミカルに仕立てていて面白かった。