映画鑑賞記
                           
                             

                                   
                               



                     
25年目の弦楽四重奏鑑賞記



 7月の3連休最後に、

映画「25年目の弦楽四重奏」を有楽町の角川シネマで鑑賞した。

この映画は首都圏では東京と千葉でしか上映していないうえに、

東京では角川シネマの有楽町と新宿の2劇場のみ。

新宿は27日から公開のため、現時点では有楽町だけだ。

それだけマイナーな映画なのかもしれないが、

当日は400人ほど入る劇場がほぼ満席だった。


 自分はいつも後ろの方の席に座るのだが、

空いていたのはエアコンの通気口の真横。

なぜか席と同じ高さに設置してあるのだ。

一応スポンジみたいなものでカバーはしてあるが、

通気口なので冷風が通り抜ける。

当日も猛暑だったので涼しくて良かったのだが、さすがに冷え過ぎ。

結局ブランケットを肩に掛けながらの鑑賞だった。


 観客は年配者が多く自分はまだ若い方だった。

場面は、世界的に有名な弦楽四重奏団「フーガ」が舞台で演奏するところから始まる。

「フーガ」の25周年を記念する公演だ。

曲はベートーベンが亡くなる半年前に作曲した「弦楽四重奏第14番」。

7楽章あるこの曲を、ベートーベンはアタッカで弾くべきと言い遺した。

アタッカとは途切れることなく弾くことだ。

しかし、その言葉に従うとチューニングすることが出来ないため、

途中で音程が合わなくなってしまう。

それを乗り越えながら演奏しなければならない過酷な曲なのだ。


 演奏の途中から、過去の場面に移っていく。

リハーサルの最中に、団員の中心的存在であるチェリストのピーターが不調を訴えた。

突然、指が思うように動かなくなってしまったのだ。

リハーサルはそこで中止。

医者に診てもらうとパーキンソンン病の初期ではないかという診断だった。

パーキンソン病は、脳内のドーパミンが少なくなり、手足が震えたり、筋肉が硬く

なって曲げ伸ばしが不自由になる難病だ。

ピーターは、「ちょっと話を聞いたくらいでなぜそんなことがわかるのか」と、

食ってかかる。

しかし医者は、検査結果を見ないと断定はできないが、

症状でだいたいわかるというのだ。

ピーターはさすがにショックを受けたが、

種々考えた結果、後任を見つけ今季限りで

引退することを決断。

そのことを団員に話すのだが、

ビオラ担当のキャサリンは激しく動揺する。

父親的存在で、

完璧な四角を支えているピーターを抜きに存続はできないと思えたからだ。

一方、第2バイオリン担当のロバートは、

これを機会に第1バイオリンに移りたいと主張する。

しかし、第1バイオリン担当のダニエルには「こんな時に」と非難される。

ロバートはタクシーの中で妻のキャサリンに訴える。

これまで第2バイオリンに甘んじてきたのは、キャサリンと離れたくなかったから。

本当にやりたかったのは第1バイオリンであり、

自分にはその才能があると説得する。

しかし、ロバートの才能を認めないキャサリンに、

腹を立てタクシーを降りてしまう。

その夜はジョギング仲間の女性、ピラールと関係を持ってしまったのだ。


 後日、浮気を簡単に見抜かれたロバートは、妻に家を出ていけと告げられる。

一方、ダニエルはロバート夫妻の一人娘でバイオリニストである、

アレクサンドラを指導していたのだが、

彼女から両親の別居を聞き、ロバートを叱責する。

ロバートは、

「他人の希望は取り入れず、

自分のスタイルを崩さないダニエルのやり方には我慢できない」

と、応酬するが、

「おまえは第2バイオリンに関しては優秀だが、第1バイオリンは無理だ」と反論。

二人の溝はどんどん広がっていく。


 一方、25周年記念演奏に向けてのリハーサルは続けることになった。

ピーターは病院で懸命にリハビリに励み、

ようやく練習に参加できるようになるのだ。

そんな中、ダニエルはアレクサンドラのアパートで関係を持つ。

その直後に訪れた母のキャサリンは、

さっきまで二人がベッドの中にいたことを見抜いてしまう。

「なぜこんなことを・・・」

と、責められた娘は猛烈に反抗する。

「自分は、音楽のことしか考えない母親に見捨てられた子供。

あんたのような人間にはなりたくない。」と。

そんなつもりはなく、

母親と音楽家の両立を考え必死でやってきたと諭すのだが、

には通じない。

最後まで暴言を吐く娘に腹を立て、

平手打ちして娘のアパートを出て行くキャサリン。

ピーターの自宅でおこなっていたリハーサル中にキャサリンはダニエルを追及する。

「自分はキャサリンを愛している。どうにもならない。」とダニエル。

それを聞いたロバートはダニエルを殴り乱闘に。

ピーターは、

「私の家で暴れるのはやめろ。音楽に敬意を払え」

と、毅然として皆を追い払う・・・。


 本作は、タイトルでは演奏中心の音楽映画と思えるが、

人間の激しい愛憎を描く人生ドラマだった。

それにしても、主役の4人は、

決して音楽に通じているわけではないのに、

映画の中ではリアルな音楽家に見えるからすごい。





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