映画鑑賞記
                           
                             

                                   
                               



                        
ふしぎな岬の物語鑑賞記




 封切り日の10月11日(土)に、

ららぽーと横浜のTOHOシネマズで映画「ふしぎな岬の物語」を鑑賞した。

本作は、今年の「モントリオール世界映画祭」で、

「審査員特別賞グランプリ」、「エキュメニカル審査員賞」の2冠を受賞している。

監督は成島出。

原作は森沢明夫の「虹の岬の喫茶店」。


 年を重ねてきたせいか、ここ数年は心がほっとする映画が良くなってきた。

以前は、英語の勉強になるからと、

洋モノを字幕版で鑑賞することも多かったが、

どうもアメリカ映画に多いアクションものは疲れる。

去年鑑賞した「トランスフォーマー・ダークサイドムーン」には参った。

鑑賞記書くのもつらかった。

かといってファンタジーは嫌だし・・・。

というわけで、

日常の人間ドラマを描いた本作は豪華キャストによる、

個性的な演技が楽しめるナイス作品だった。

特に印象的だったのは効果音に村治佳織の演奏を流していたこと。

メインテーマの「望郷~ふしぎな岬の物語~」も村治佳織の演奏。

もうひとつ興味深いのは、

村のフォークソング愛好家として登場する5人組のおじさんたち。

昔懐かしいフォークソング、

(といっても本作用に作曲したオリジナルソングだと思うが)を歌うのだが、

これがまた、杉田次郎、堀内孝雄、ばんばひろふみ、

高山巌、因幡昇という団塊世代がセッションしている。

このメンバー、今年5月に「ブラザーズ5」という名で、

フォークソンググループを結成したようだ。

さりげなく村人を演じているが、歌も演奏もプロフェッショナル。

フォークソングファンにはたまらないかも。
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 前置きが長くなってしまったが、

シーンは、とある岬の先端で、

小さなカフェ・「岬カフェ」を営む柏木悦子(吉永小百合)が、

甥の柏木浩司(阿部寛)とともに、

ボートで小島に湧水を汲みに行くところから始まる。

店は質素だが清潔で、積んできたばかりの花でかざってある。

壁には、虹のかかった海を描いた油絵が。

亡き夫の作品だ。

スケッチ旅行で偶然この岬に訪れた夫が、

美しい虹に出会い描いたものだった。

このカフェでは、

注文を受けてから豆をひき、ネルドリップで丁寧にコーヒーをいれる。

そして「おいしくなれ、おいしくなれ~」と魔法の言葉。

村の常連客が悦子のいれる心づくしのコーヒーと、

安らぎの会話を求めてやってくるのだ。

 しかし、やってくるのは常連客だけではない。

ある深夜にドロボー(片岡亀蔵)が入った。

レジのお金を盗もうとする。

手には包丁。

そんなドロボーにもやさしく接する悦子。

「虹の絵に見とれている人に悪い人はいない。

その絵を持ちかえって売りなさい。

うちにはレジのお金とその絵しか財産は無いのよ」と。

そしておいしいコーヒーとトーストを食べさせる悦子。

恐縮するドロボー。

「自分は包長職人。店を出したが、うまくいかず、

家族を養うためにドロボーに入った」と涙ながらに打ち明ける。

改心したドロボーは最高傑作と自称する包丁を置いて出て行った。


 カフェのすぐそばには、

浩司が土地のオーナー(石橋蓮司)に地代も払わずに掘立小屋に住んでいる。

浩司の使命は悦子を守ること。

感情をコントロールできず、たびたびトラブルをおこしてしまうが、

悦子はそんな浩司を理解し、温かく微笑んでいる。

常連客のひとり・タニさん(笑福亭鶴瓶)は不動産屋に勤めているが、

30年間このカフェに通い続けている。

独身で、悦子に淡い恋心を抱いていた。

そんなタニさんに転機が訪れる。

リストラで突然の転勤を言い渡されたという。

会社を辞めてこの地にとどまるか、大阪に行くか、心は揺れる。

大阪に行くことは悦子との別れを意味する。

浩司に相談すると、今こそ告白すべきと勧められた。

意を決して悦子に告げる。

一緒に大阪に来てほしいと。

結果は×。

最愛の夫が導いてくれたこの岬から離れることが出来ないのだ。

やがてタニさんとの別れ。

フェリーで大阪に行くタニさんに、

岬から大きく手を振り、頭を下げて感謝を表す悦子。

双眼鏡でのぞくと悦子の姿が。

「なに頭下げてんねん。感謝するのはこっちや、ほんまにありがとう!」

と叫ぶタニさん。

目には大粒の涙が・・・・。
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 漁師の徳さん(笹野高史)も常連客。

奥さんと死に別れ、ひとり暮らしだが、

悦子のいれたコーヒーを飲むのが唯一の楽しみだ。

そんな徳さんの一人娘・みどり(竹内結子)が、

鯨祭りの日に突然、岬村に帰ってきた。

夫の暴力に耐えかね、離婚したいという。

相談を受けた浩司は、みどりに会いにやってきた夫を、

やくざに扮して脅し、離婚届に判を押させる。

やがて落ち着きを取り戻したみどりが父と水入らずの会話をしていると、

突然吐血した。

心配するみどり。


 その後、カフェの常連客でもある町医者の冨田(米倉斉加年)の勧めで、

県立病院に検査入院する。

結果は末期の癌。

死を覚悟する徳さん。

「俺のことは心配するな、それよりはやく仕事を探せ」と娘にやさしく語る。

病床でだんだん弱っていく父を喜ばしたいと、

カフェで悦子からおいしいコーヒーの入れ方を習うみどり。

病室で、おいしいおいしいと飲む徳さん。

そして死・・・。

慕ってくれた人たちとの別れの中に、

大切なものが次々と失われていく空虚感に襲われる悦子。

ある時、カフェの椅子に腰かけたままぼうぜんとしていた。

調理場のコンロには火がついたまま。

その火が布きんに燃え移る。

またたく間にカフェは炎に包まれる。

カフェの方から煙の上がるのを見て飛んでくる浩司。

間一髪で悦子を助け出す。

「なぜこんなことに」と聞く浩司。

「あなたには私の気持ちをわかっていない。

あなたは私を見守っているつもりかもしれないけど、

亡くなった姉から託されたあなたを、

しかたなく育ててきただけ。」

と泣きながらすべてを打ち明ける悦子。

そんな悦子をあたたかく抱きかかえる浩司・・・・・。


 本作は吉永小百合自身も企画したという渾身の一作のようだ。

日常の中の非日常性を映画いた興味深い作品だった。

難をいうと、吉永小百合のセリフが哲学的というか、

少々硬いところがあった。




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