映画鑑賞記
「バンクーバーの朝日」鑑賞記
12月22日(月)にTOHOシネマズららぽーと横浜で、
映画「バンクーバーの朝日」を鑑賞した。
本作は戦前にカナダ・バンクーバーに実在した、
日系人野球チーム「バンクーバー朝日」を描いた作品だ。
フジテレビ開局55周年を記念したもので、
監督は石井裕也で、
主演は、レジ―笠原役の妻夫木聡。
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場面は、1900年代に多くの日本人がカナダの新天地を目指して、
移住するところから始まる。
夢を抱いて渡ったはずなのに、そこで待っていたのは過酷な肉体労働、貧困、
そしていわれなき差別だった。
そんな中、日本人街に野球チームが生まれた。
選手は日系二世が中心。
移住者たちにとっては野球観戦が娯楽であり、希望のひとつでもあった。
選手たちはそれぞれ違う職業に従事しており、
仕事を終えると練習に駆けつけるのだ。
チームは地元のマイナーリーグに所属しており、
シーズンになるとリーグ戦が始まる。
しかし白人チームと違って体が極端に小さい。
選手は必死で食らいつくがスピード、パワーに劣り、
しかも審番までが白人チームに味方するのため連戦連敗する。
その中で一人、気を吐いているのがピッチャーのロイ永西(亀梨和也)だ。
負けん気が強く、いつも真っ向勝負をする。
仕事は漁業関係。
戦争で父を亡くし、病床に伏す母を看病しながら懸命に生きている。
一方、ロイと違って性格が明るくやさしいレジ―笠原(妻夫木聡)は野球が大好きな青年。
毎年、シーズンが訪れるのが待ち遠しくてたまらない。
職場は製材所。
職場には他の選手も働いている。
カナダ人労働者と一緒の職場だが、
一日10時間働いてもカナダ人の半分しか手当てが貰えない。
レジ―は父親・笠原清二(佐藤浩市)、
母親(石田えり)、妹・エミー笠原(高畑充希)と4人暮らし。
両親は広島から移住してきた。
清二は性格が荒く、けんかっ早い。
老体に鞭打ちながら日雇い労働をしているのだが、
稼いだお金をすべて実家に送金し、家には全く入れない。
怒った女房はとうとう亭主を家から追いだしてしまった。
それでも息子の試合には必ず観戦にやってくる。
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レジ―に転機がやってきた。
チームの主力選手が二人、日本に帰国することになったのだ。
一人はキャプテン。
監督が、その後任になってほしいというのだ。
「こんな自分がキャプテンだなんて・・・」と臆するレジ―。
最後は監督やチームメイトに乗せられ引き受けることになった。
しかし、懸命にチームを引っ張ろうとするものの、
チームはますます弱くなっていく。
とうとう日本人街のファンからも皮肉を言われる始末。
責任を感じたレジ―は、
「彼らとはまともに闘ってもかなわない。それならば」と奇策を考えた。
それはバントヒット。
これが、まんまとハマった。
彼らは体が大きいため機敏にボール処理ができないのだ。
結局ノーヒットで点を取った。
それからはバント、盗塁、バント、盗塁の連続。
弱かったチームが勝った。そして連勝。
日本人街は大いに盛り上がった。
白人までもが、「バンクーバー朝日」の試合は面白い、
と応援してくれるようになった。
しかし、差別意識の強い中、
日本人が活躍するのが許せない選手や審番がいた。
あきらかなボールをストライクという審番。
故意にデッドボールを投げつけてくるピッチャー。
怒り心頭にきたロイがベンチを飛び出し、相手ピッチャーに突進していく。
しかし一撃でロイを殴り倒してしまった。
その後、両チーム入り混じっての乱闘・・・・。
翌朝の新聞に「バンクーバー朝日出場停止」の文字が躍った。
乱闘を招いたロイの行動が反感を買ったのだ。
落胆する選手やファン・・・。
日本に帰ってしまう選手も出てきた。
このままチームは解散してしまうのか。
それでもレジ―は練習を続ける。
一方、乱闘を招いた責任感からかロイは練習に来なくなった。
心配したレジ―はロイを訪問する。
「野球を続ける意味が感じられなくなった」と答えるロイ。
「おまえが必要なんだ」と説得するレジ―。
それでも首を縦に振らないロイ・・・。
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数日後、出場停止が解除された。
カナダの野球ファンから、
「バンクーバー朝日」を復帰させよという声が多数あがったからだ。
監督を始め選手達が日本人街の行きつけのレストランに集う。
これからも試合を続けるかどうか、選手達に確認するためだ。
監督から、ロイキャプテンに話をするよう指示をした。
しかし、話し下手なロイは、同席していた妹のエミーにその役を振る。
戸惑いながらもエミーが立ちあがり、とつとつと話し始める。
エミーは優秀な高校生で、
裕福な白人家庭でハウスワーカーをしながら学費を稼いでいた。
進学にあたり、奨学金をもらえることになったのだが、
人種差別のため、支給がされなくなったのだ。
そんな失意の中でのスピーチだったが、
彼女にとっても野球チームは希望の星だった。
なんとしても野球を続けてほしいと涙ながらに訴える姿に、皆が感動。
ロイを除く全員が賛同してくれた。
そして最後にロイが立ちあがり、皆に告げる。
「自分たちをこんなに応援してくれているとは思っていなかった。
これからも続けていくのでよろしくお願いしたい」と。
リーグ戦に復帰した「バンクーバー朝日」は、
頭脳野球で勝ち続けリーグを制覇する。
もりあがる移住者やカナダのファン達・・・。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
日本軍のパールハーバー襲撃。
これを機に移住者たちは強制収容所に送られてしまう。
持ち物はバッグひとつに制限された移住者たちが、すし詰めの列車で送られていく。
その中にレジ―家族がいた。
先に出発する列車にロイが乗っているのを見つけ、駆け寄っていく。
ロイが列車のタラップに出てきた。
「お母さんは大丈夫?」と声をかけるレジ―。
「なんとか」と答えるロイ。
「また一緒に野球やろうな」とやさしくレジ―が語りかける。
「ぜったいやろう」と笑顔でロイが答える・・・。
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その後の活動はあまりよくわかっていないが、
「バンクーバー朝日」は2003年にカナダ野球殿堂入りを果たすことになる。
今回、このようなチームが実在したことを初めて知ったが、
後味の良い、さわやかな作品だった。
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