映画鑑賞記
                           
                             

                                   
                               



                       
 風に立つライオン鑑賞記





 
3月28日(土)に、シネマズ東宝ららぽーと横浜で、

映画「風に立つライオン」を鑑賞した。

本映画館は13スクリーンあるが、

今回はプレミアスクリーンで、全席がリクライニングシート、

サイドテーブル付きで、非常に快適だった。

料金が同じなのに、何故だろう。

たまたまだったのだろうか。

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 原作は、さだまさしの同名小説。

40年以上前にさだまさしが、

ケニアの長崎大学熱帯医学研究所から帰った、

柴田紘一郎医師に出会い、

現地での話に痛く感動したようだ。

その後、15年経て同名の歌を作曲した。

その歌を聞いて感動した、俳優・大沢たかおが、

さだまさしに小説化するよう熱望したようだ。

5年経由して小説が完成。

そして、今回ついに映画化となった。

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 東日本大震災直後の津波で破壊された町。

黒人が真剣なまなざしで、辺りを見渡していた。

握り締めた手には、トウモロコシの種が。

「ガンバレ、ガンバレ・・」と何度も繰り返している。

黒人が立っているすぐ近くに、少年がぼうぜんと座っていた。

流された自宅跡であろうか・・・。

黒人を見て驚く少年。

にっこりほほ笑む黒人。

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 時代は東日本大震災から25年前にさかのぼる。

1987年、青年医師・島田航一郎(大沢たかお)が、

医師・青木克彦(荻原聖人)と二人で、

ケニア・ナクルの長崎大学熱帯医学研究所に派遣されてきた。

航一郎は長崎大学の外科医。

人から頼まれると断れず、いつも「大丈夫」と引き受けるところから、

「Mr.大丈夫」と呼ばれていた。

航一郎は、もともと医師になりたかったわけではないが、

親からプレゼントされたシュバイツアーの自伝に感銘を受け、

医師を志すようになった。

 シュバイツアーと同様に、アフリカ医療に関心を持つようになったのだ。

ケニアに派遣されたことは、航一郎にとっては願ってもないことだった。

しかし、それは恋人でもあり、

長崎大学の同期・秋島貴子(真木よう子)との別れでもあった。

 貴子は長崎県五島列島・胡蝶島の出身。

父の秋島誠一(山崎一)は、島で唯一の診療所を営んでおり、

島民にとってはかけがえのない存在であった。

そして、両親は貴子に後を継いでほしいと願っていた。

 航一郎がケニアに行くと決まった時、

貴子に一緒に付いてきてほしいと打ち明ける。

悩みながらもケニアに行くことを決心する貴子。

その後、両親のもとに行き、そのことを告げる。

「おまえの決めた道を進みなさい」と父。

しかし、その直後、脳梗塞で倒れる。

診療所を休診にするのだが、

子供を抱えた母親が駆け込んできた。

父は診れないため自分が診察する。

「明日また来てください」と告げるが、

自分は東京に帰らねばならない。

そんな折、島の老婆が訪ねてきた。

誠一が倒れたと聞いて、何時間もかけて歩き、

お見舞いに来たというのだ。

父親の存在の大きさに改めて気づく貴子。

老婆が、お見舞いの品を届けた後、歩いて自宅に帰るという。

申し訳なく思い、貴子は老婆の自宅まで車で送り届ける。

折しも島には嵐が来ていた。

老婆を降ろし、帰宅する途中、

がけ崩れが発生し大岩が車めがけて落ちてきた。

間一髪で命は救われたが、車は大破して動かない。

気が動転して身動きできない貴子。

ふと見ると、泥だらけの車のウインドウをぬぐい、誰かが大声で呼んでいる。

それは胡蝶島で漁師をしている田上太郎(鈴木亮平)だった。

貴子を助けに来てくれたのだ。

太郎は貴子に対し、ひそかに心を寄せていた。

九死に一生を得た貴子は、太郎に連れられて実家に戻り、

東京への帰宅をしばらく遅らせる。

数日して東京に戻った貴子は、航一郎にケニア行きを断る。

診療所を継ぐことを決心したのだ。

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 長崎大学熱帯医学研究所に赴任した航一郎は、

所長の村上雅之(石橋蓮司)のもと、研究活動に従事する。

半年後、ケニア・ロキチョキオにある赤十字戦傷病院から要請を受け、

同僚の青木とともに1ヶ月間派遣されることになった。

無邪気に喜ぶ航一郎に、先輩研究者は、

「君はあそこがどういう所か知っているの?」と示唆する。

「はぁ」と生返事する航一郎。

砂漠の中を延々とトラックで移動し、

ようやく到着したロキチョキオに待っていたのはとんでもない現実だった。

 次々と病院に運ばれてくる重傷者たち。

彼らは麻薬を打たれて戦場に立たされた少年兵だったのだ。

満足な設備も薬もない中で、戦傷病院の医師達にできることは、

負傷した手や足を切り落とすことだった。

必死に少年兵の命を救おうとする航一郎。

その甲斐もなく死んでしまう子供たち。

さながら地獄絵のようだ。

それでも、命を取り留めた子供たちが傷を癒し、

元気になっていくのを喜びに感じていた。

 やがて1ヶ月が過ぎ、ナクルに戻る日がやってきた。

抱擁したあと笑顔で見送る院長や同僚、そして子供たち。

「また戻ってくるから」と言い残してトラックに乗り込む航一郎。

研究所に戻り、研究の仕事を再開した。

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 村上所長が寝ていると、遠くで誰かの叫ぶ声が聞こえる。

こんな朝早くから何事だろう、

と眠い目をこすりながら外に出てみると、

航一郎が大声で、

「ガンバレ―!、ガンバレ―!、ガンレ―!」と繰り返し叫んでいたのだ。

後ろで見ていた村上に「先生、もうすぐ夜が明けますよ」と語りかける。

「そうだな」と村上。

航一郎は「この地平線の先に、戦争で苦しんでいる人たちが大勢いるんです。

そうした人たちを一人でも救っていきたいいんです」と自身の胸のうちを告げる。

そして「ガンバレ」は、自身に対する鼓舞だったのだ。

やがて航一郎は、再度戦傷病院に赴任することを申し出る。

しかも今度は転籍だった。

 戦傷病院に再度赴任する日が近づいた頃、貴子から手紙が届いた。

そこには「診療所の後を継いだこと。

漁師の太郎と結婚すること」が綴られていた。

祝福の思いを込めて返事を書こうとするのだが、全く筆が進まない。

夜が明けてようやく書き終えた航一郎は、

村上に手紙の送付を託して戦傷病院に向かった。

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 ロキチョキオの戦傷病院に航一郎が戻ってきた。

喜ぶ院長、同僚、子供たち。

そして前回と同じように、傷ついた少年兵たちが次々と運ばれてくる。

その中の一人・ンドゥングは、片足を失うも一命を取り留めた。

航一郎がやさしく「痛みはどう」とやさしく接しようとするが、

「シャラップ! ゲットアウト!」と言って寄せ付けようとしない。

英語を話せることから上流家庭で育ったようだが、

他の子供たちとも打ち解けず、孤立していた。

 その頃、日本から草野和歌子(石原さとみ)が看護師として赴任してきた。

彼女は規律を重んじ、正義感が強い女性だった。

ある時、航一郎がおこなう手術に立ち会っていると、

彼女に縫合しろと命令する。

「先生、看護師が縫合するのは法律違反ですよ」と答えると、

「ここは法律で人を守れるような場所じゃないんだよ」

と、航一郎が厳しく叱った。

和歌子はそんな航一郎に反感を感じていた。

しかし、ある夜、和歌子が部屋にいると、

遠くで誰かが、

「ガンバレ―」、「ガンバレ―」、「ガンバレ―」と叫んでいる。

近づいてみると航一郎だった。

 「何故?」と尋ねると「自分を励ましているんだ」と航一郎が答える。

必死で子供たちを救おうとしている航一郎の思いを知ったのだ。

やがてそれは尊敬の念に変る。

和歌子も子供たちが一日も早く元気になるよう懸命に看護した。

(やがてこの病院に孤児院をつくることになる)

 ある時、ンドゥングが絵を書いていた。

見ると航一郎の顔だった。

それも見事な絵だった。

喜んだ和歌子が航一郎に手渡すと、、

ンドゥングがようやく心を開いてくれたと大喜びした。

ンドゥングが横になっているベッドのそばに行き、

隠していた絵をうれしそうにンドゥングに見せた。

「君はミケランジェロみたいに本当に絵が上手だ。

これから君はミケだ」と航一郎。

「絵は興味ない。人を銃で撃つことが大好きなんだ。

僕は狙った獲物は絶対に逃がさない」とンドゥングが答える。

吐き捨てるように言うンドゥングに、

航一郎は「君とは友達にはなれない」と怒って病室を出ていく・・・。

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 月日が流れ、クリスマスの日がやってきた。

キャンプファイアを職員や子供たちが囲み、楽しそうにしている。

そこにサンタクロースがやってきた。

航一郎だった。

子供たちひとりひとりにプレゼントを渡す。

そして最後にンドゥングに渡したものは銃だった。

廻りの空気が凍りつく。

「これがほしかったんだろ!」と航一郎。

ンドゥングは無言で受け取るが、そのあと意外な行動に。

キャンプファイアの火の中に銃を投げるのだ。

そして泣きながら、初めて自分の過去を語り始めた。

「僕の両親は戦争で殺された。だから復讐するんだ」と。

「君には君の生き方がある。もっと価値のある生き方をするんだ」と航一郎。

「僕は9人殺してきたんだ。こんな自分は誰も相手にしてくれない」。

「だったら10人を助ければいいんだ」とンドゥングを抱きしめる。

大粒の涙をこぼすンドゥング。

その日からンドゥングは、医師になることを決意する。

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 航一郎は仕事が休みの日には病院の運転手を伴ってトラックに乗り、

道なき道を通ってサバンナに出かける。

そこは戦場であり危険に満ち溢れていた。

航一郎はそれでも、苦しんでいる人たちを助けようとするのだ。

国境を越えようとするが兵士がさえぎって通してくれなかった。

仕方なく帰ろうとすると坂道で車がエンストしてしまう。

降りて押そうとした瞬間、銃弾に見舞われる。

運転手が足を撃たれた。

急いで運転手を引きずり岩陰に隠れる。

そこに手榴弾。

立ちあがる白煙。

運転手が目を覚ますと、そこには航一郎の姿はなかった・・・・。

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 胡蝶島唯一の診療所では貴子が所長として島の住民の診療に従事していた。

ある時、長崎大学で同僚だった柴田から電話が入った。

航一郎が死んだと告げられる。

悲嘆にくれる貴子・・・。

数日経ってポストに郵便物を取りにいくと、国際便が入っていた。

送り主は航一郎。

あわてて封をあけて手紙を読む。

泣き崩れる貴子。

そこにはたった一言、

「君には幸せになってほしい」

と書いてあった・・・。


 場面は冒頭の津波で破壊された町に戻る。

少年にやさしく語りかけていた黒人はンドゥングだった。




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