映画鑑賞記
                           
                             

                                   
                               



                
   愛を積むひと鑑賞記




 6月20日(土)にららぽーと横浜シネマズ東宝で映画「愛を積むひと」を鑑賞した。

当日は封切り日だったが、思ったほど観客は多くなかった。


 原作は2002年に出版された小説「石を積むひと」(エドワード・ムーニー・Jr作)。

自分は読んだことはないが、

夫婦や親子の関係、周りの人々との交流を愛おしく描いた作品だ。

異例のロングセラーらしい。

原作は米国だが、本作は日本が舞台となっている。


 東京の下町で工場を営んでいた小林篤史(佐藤浩一)が、

工場をたたみ、妻・良子(樋口可南子)とともに、北海道美瑛町へ引っ越してきた。

 シーンは良子を乗せた飛行機が旭川空港に着陸するところから始まる。

良子には心臓に持病があり、東京の病院に受診に行った帰りだ。

タクシーを走らせ自宅に戻る。

診察結果は決して好ましいものではなかったが、

夫には「良くなった」と明るく告げる。

さらに、疎遠になっている娘の聡子(北川景子)の事を話すと、

「おれはあいつのことは許せないし、

あいつだって俺のことを嫌っているんだ」と受け付けない。

「あなた、そんな訳ないじゃない」と悲しい声で反論する良子。

篤史は仕事人間。

職人気質のため、これまで経営は良子に任せてきた。

しかし、所詮下町の零細企業。

景気のあおりを受け、業績が落ち込む。

債権者からの取り立てに頭を下げる良子。

心労が積み重なる。

 やがて経営が立ち行かなくなり、工場をたたむことになった。

篤史は、苦労をかけた良子の希望をかなえるために、

北海道に移り住むことにした。

購入した家は、以前外国人がすんでいたらしく洒落た一軒家。

良子は野菜作り、ガーデニング、家の内装アレンジなど日々を楽しんでいる。

一方、篤史は仕事が無くなった途端に手持無沙汰になり、暇を持て余していた。

見かねた良子が、長年のあこがれでもあった、自宅の周りの石塀作りを頼む。

スケッチを書いて篤史にみせるが「なんで自分がそんなことを」と強く拒む篤史。

それでもあきらめない良子は、篤史を説得する。

しぶしぶ引き受ける篤史。

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 ある時、平間造園の親方(森崎博之)が訪問してきた。

良子に石材の搬入を頼まれたという。

作業を請負うという親方に、自分が一人でやるという篤史。

平間造園の見習い・杉本徹(野村周平)がお手伝いをすることになった。

作業終了は一年後。

早速、篤史と徹の二人で石塀作りが始まる。

まずは石を並べる場所の穴掘だ。

篤史は、慣れない作業の為、すぐに音を上げてしまう。

一方、無口で愛想は悪いが、黙々と作業する徹。

働き者なのだが、作業が終わると、さっさとバイクで帰宅してしまう。

「変なやつだ」とつぶやく篤史。

それでも石塀作りは着々と進んでいった。

 ある時、良子が篤史に「これからは徹を昼食に呼びたい」と相談する。

篤史は「変わったやつだし、呼ばなくてもいいのでは」と難色を示すが、

やさしい良子は「かわいそうだから是非」と説得する。

その日から徹も一緒に食事をするようになった。

徹には彼女・上田紗英(杉咲花)がいた。

紗英は中学時代の同級生だ。

二人がデートをした後は、バイクに彼女を乗せて彼女の自宅に送っていく。

 ある日、篤史と良子が外出していると、

歩道橋の上で二人が会っているのを目撃する。

見つからないように隠れる篤史と良子。

若いカップルほほえましいシーンに目を細める篤史と良子。

一方、徹には一人の悪友がいた。

薄汚い格好で徹のアパートにやってきて、

「金がなくなったので居候させろ」という。

仕方なく部屋に上げる。

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 ある時、篤史と良子がコンサートに行くことになった。

悪友にそそのかされた徹が、その留守をねらって空き巣に入る。

二人は金目の物を物色する。

そこへ、篤史と良子が帰ってきた。

渋滞で車が動かず、途中で引き戻してきたのだ。

部屋が荒らされているのを感じ、恐る恐る家に入る。

気配を感じた良子が部屋をのぞくと、急に徹が飛び出してきた。

その瞬間に良子にぶつかる。

気を失う良子。

足にも重傷を負ってしまった。

徹と悪友は逃げていく。

篤史は救急車を呼び、病院へ。

犯人の顔は見ていないと言う良子。

数日経って自宅に戻るが、家事ができなくなってしまった。

徹が紗英に真相をすべて話したことから、

家事を手伝うために紗英がやってきた。

そんなこととは知らず、喜ぶ良子。

親子のように紗英を可愛がる。

ある時、良子の誕生パーティに徹と紗英が招待される。

プレゼントを渡す二人。

紗英が篤史に「おじさんは渡さないの」と聞くと、

「俺はあとでいい」と照れる。

「せっかくだから、今ちょうだい」と良子。

しぶしぶ篤史がプレゼントを持ってきた。

良子はそれが何かよくわかっていた。

小さな宝石箱に真珠がひとつ入っている。

篤史は結婚してから毎年のように贈ってきたものだ。

「会った当初は、ネックレスを買う金がなかったので、

真珠を一粒づつ贈ってきた」のだ。

それを良子が手作りのネックレスに仕立てる。

不揃いで不格好だが、毎年、すこしづつ真珠が増えていく。

良子の大切な宝物なのだ。

でも「今はそれが無くなった」という。

空き巣に取られてしまったというのだ。

大切な宝物が無くなっても、明るくふるまう篤史と良子。

顔を見合わせる徹と紗英・・・。

パーティのあと、良子がこっそりと紗英に品物を渡してきた。

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 心苦しさから、すべてを正直に話そうとする徹と紗英だったが、

言い出せないまま月日が過ぎていった。


 季節は秋。

美しく色づいた山道を通り、良子と紗英がキノコ狩りに行く。

楽しく話をしながら歩いていたが、

紗英が離れてキノコを積んでいる最中に、良子が倒れた。

話しかけても返事がないので、振り返ると良子が倒れていた。

慌てて駆け寄る紗英。

苦悶の表情を浮かべる良子。

その後、良子は静かに息を引き取る・・・。

 母が亡くなった事を知り、

疎遠になっていた聡子が東京から戻ってきた。

ひさしぶりに対面する父と娘。

葬儀も滞りなく終了し、良子の遺骨を抱え篤史と聡子が自宅に戻る。

聡子は、東京で父と同居しようと考えていた。

そしてこんな時こそと、素直な気持ちで過去の過ちを父に謝罪するのだが、

頑固な篤史は「俺が、そんなこと許せるわけないだろう」と話は平行線になる。

 実は聡子は妻子ある男性と不倫関係になり、

相手の妻を自殺未遂に追い込んでしまったのだ。

最愛の一人娘でも、父としてどうしても許すことができない。

結局は口論となってしまった。

翌日、聡子は父と同居することをあきらめ、

東京の住所を教えて上京する。


 一人残された篤史。

良子の遺影を見ながら悲嘆にくれていた。

何もする気が起こらない。

そんな時、紗英が篤史の家を訪れ、一通の手紙を差し出した。

実は、良子の誕生パーティでこっそり受け取った品物はこの手紙だった。

自分が亡くなったら篤史に渡してほしいと頼まれていたのだ。

手紙には「あなたがこの手紙を読んでいるということは、

自分がこの世にいないということ。

自分が亡くなってがっかりしていることと思うが、

短い時間だったけど、あなたと一緒に暮せたのは本当に幸せだった」と。

妻の深い愛情を感じ、泣き崩れる篤史・・・。

数日後、徹と紗英がやってきた。

神妙な表情で篤史に打ち明ける。

「実は、空き巣に入ったのは自分だった。ネックレスを返しに来た。」と言うのだ。

驚く篤史。

しかし、咎めることはしなかった。

二人が戻った後、ネックレスを、

盗難に会う前はいつもしまっていたタンスに入れようとすると、

良子からの手紙を見つけた。

「この手紙を読んでいるという事は、ネックレスが戻ってきたということですね。

見つかって良かった。

私は、あの日、ぶつかった空き巣が誰だったか知っています。

でも叱らないでほしい」と。

そんな妻の言葉に、篤史は徹とともに石塀作りに再チャレンジすることを決めた。

 篤史には夢があった。

美瑛町に移り住んで来たのは、

40年前に良子と一緒に登山したことのある、

十勝岳連峰が望める場所に住みたかったからだ。

十勝岳は、篤史が良子にプロポーズした場所だ。

石塀が完成した時には良子の遺影を携え、

二人の思い出の場所である十勝岳に登って

完成祝いをしようと考えていたのだ。

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 そんな折、徹に事件が起こった。

紗英に徹の子供ができたのだ。

産みたいという紗英。

若くて経済力も無いので、煮え切らない態度の徹。

そんな徹の態度に嫌気がさし、一人で産み育てるという紗英。

しかし、紗英の母親・上田美智子(吉田洋)が激怒する。

「私は絶対に産むことは許さない!」と。

美智子が篤史の家に乗り込んできた。

「あんたのところの徹が、うちの大事な娘に手を出したんだ。一体どうしてくれる」

と、怒鳴る美智子。

実の息子のことように、美智子に謝る篤史。

「とにかく子供は堕すから」と告げ、美智子は去って行った。

しっかり稼いで、子供を育てるんだという篤史に、

「俺なんか仕事もないし、子供の時から悪さばかりしてきて、

誰も信用してくれない」と自分を卑下する徹。

「でかくて形の良い石ばかりで塀が出来上がっているわけじゃない。

おかしな形のいびつな石とか、必ず役に立つ場所がある。

多分俺にも、お前にもだ」と励ます篤史。

 翌日、篤史と徹は両親に謝るために紗英の自宅に行く。

そこには酪農を営む頑固一徹な義父・上田熊二(柄本明)がいた。

徹が謝ろうとすると、思い切り殴り飛ばす熊二。

土下座して謝る徹。

その後、二人は部屋に通され、

「父親として認めてやってほしい」と篤史が頭を下げる。

「お前らには関係ない。紗英は俺たちの子供だ。

どうするかはこちらで考える。帰ってくれ!」と二人を追い返す熊二。

結局、話は物別れに終わった。

それでも紗英は妥協しない。

根負けした両親は、やがて子供を産むことを認める。

出産が近くなり、あれほど憎んでいた徹のことを、

最後は父親として認めざるを得なくなった。

熊二は、徹を一人前にするために、

知り合いの酪農工場に住み込みで雇ってもらうことにした。

出産当日、熊二、美智子に加え、篤史と徹が病院で立ち会う。

そして誕生。

大喜びする熊二と美智子。

喜びも冷めやらぬ中、熊二は、徹の赴任を見送るとともに、

篤史を自宅に送ってきた。

そして熊二は篤史の石塀作りをふらつきながらも手伝ってやる。

その日の夜は、さしで飲むことに。

けんか腰の会話をしながらも二人は仲がいい。

孫の自慢をする熊二が、篤史に子供がいるかと聞く。

「娘がいる」と答える篤史に、「写真を見せろ」と要求。

「なんでお前に写真を見せないといけねぇんだ」と反論する篤史に、

「ブスなのか」と挑発。

それならばとアルバムを探しに行く篤史。

アルバムを開いていると良子の手紙が・・・。

「この手紙がどうやら最後の手紙になりそうです。

篤ちゃんが石塀を完成してくれると思うと少しも悲しくありません。

だから篤ちゃんには一人になっても最後まで石を積み続けてほしいの。

そして、あなたが聡子の事を愛していることを伝えて上げてほしいの。

それはあなたにしかできないこと」と。

アルバムには、娘の誕生の写真から、

楽しかった思い出の写真がぎっしり詰まっていた。

想い出に慕ったあと、アルバムを持って熊二に見せようと居間に戻ると、

熊二はすっかり出来上がっていて、大いびきをかいていた。

苦笑いする篤史・・・。

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 数日後、聡子あてに書いた手紙を携え篤史は東京に。

以前聞いていた住所を探し当てると、そこは二階建てのアパート。

階段を上り玄関から呼び鈴を押すが誰も出てこない。

手土産を置き戻ろうとすると、子供を連れた聡子が戻ってきた。

驚きつつ篤史を部屋に招き入れ、今の状況を説明する聡子。

「不倫関係にあった彼は妻と別れ、連れ子とともに同居しており、

近々結婚する。その時は出席してほしい」というのだ。

赤裸々に話してくれる娘に理解を示す篤史。

ひとしきり話をした後、「彼氏に会ってほしい」という聡子の意に反し、

北海道に帰るという。

結局、手紙は渡せなかった。

自宅に戻り良子の遺影に向かって、聡子に会ってきたこと、

手紙を渡せずに終わったことを報告する篤史・・・。

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 月日は過ぎ、石塀がようやく完成した。

そして、予定通り良子の遺影とともに十勝岳を登る。

順調に思えた登山だったが、天候が急変する。

篤史は途中で足を滑らし、頭を打って気絶してしまった。

遭難寸前のところで助けられ、病院に収容される。

入院中の篤史を見舞うために聡子が急遽東京から戻ってきた。

容体を気にかける聡子にやさしく微笑む篤史。

そして良子の形見だったネックレスを手渡し首にかけろと言う。

すべてを許した瞬間だった。

「お父さん、ありがとう」と大粒の涙を流す聡子・・・。

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 雄大で美しい自然を背景に作られた本作は、

乾いた心に水を撒き、しっとりと潤わしてくれる良い作品だった。





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