§ミズシマさんの
     とっておき雑楽ノート(U)§


                   (第一話)

           
ブルーノート東京 体験リポート
         
    ― ロン・カータートリオ ―

 雑学ノートの名前でこのコーナーを頂きながら、

最後に出稿してから7年経っていました。


久しぶりですが、年明けのくつろぎ気分が残っている間に戯言を並べてみます。

先月のクリスマスシーズンになるけど、

友人と青山のジャズクラブ「ブルーノート東京」に出かけてみた。

表参道からぶらりと歩いて10分くらいの場所で、

日中はたまに店の近くを通ることがあったが、

店に入るのは今回が初めてだ。

 そういえば、この近くに昔は「キーストン」というジャズクラブがあって、

今は亡きピアノのケニュー・ドリューのトリオを聞きに行ったことがある。

ずいぶん昔になるけど、このヨーロッパのトリオは今でも好きで、

時々アルバムを愛聴している。(おっと、「ブルーノート」に話を戻そう)


クリスマスシーズンの5時過ぎは、あたりがもう暗く、

訪れた店のドアには電飾のリースが飾られ銀色に輝いていた。

店内に入ると開場前なのにロビーフロアは既に人で一杯。

ほとんどがシニアの人達で、静かに会話しながら待ち時間を過ごしている。

この日のプログラムはベースのロン・カーターを中心にしたトリオ。

ギターはラッセル・マローン、ピアノはドナルド・ヴェガの定番メンバー。

ロン・カーターはちょうど10年前に、

ニューヨークのジャズクラブ「バードランド」でミッシェル・ルグランと共演しているのを見に行っている。

あの夜のステージはフランスから来ていた映画音楽の作曲家ルグランが主役。

ピアノの弾き語りで、やんやの喝さいを浴びていた。

ロン・カーターはおとなしく脇役に徹していたな。

 (で、「ブルーノート」に戻そう)

友人と座った席は、真ん中のテーブルフロアより1段上がったコーナーテーブル。

開演前の1時間をワインを飲んで、軽く食べながら話をしていると、

やがてダークスーツに身を固めた3人がステージに登場。

出だしの曲の名前は分からなかったが、トリオの美しいハーモニーで始まり、

ギター、ピアノ、ベースの順にフィーチャーしながらセッションが進んでいく。

気持ちよくスイングする曲の繋ぎで、

ロン・カーターがプレイヤーを紹介し、最後に自己紹介。

会場からは熱くも、静かな盛り上がりの拍手が送られる。

ハードやファンキーなホットジャズ(この言い方は少し古いかな)と違い、

ここでは室内楽の上質なコンサートを聴いている感じ。

 満席の会場はあくまでも静か。

テーブルでは食器の音や私語も憚れる。

そんな中、ドジな私はスマホでそっと写真を撮ったつもりが、

シャッター音が大きくて店の人に注意された。

何曲目かに、おなじみ「マイファニーバレンタイン」が出てきた。

リズムセッションのトリオだけど、とても静かで気持ちよく音を刻んでいく。

ギターとベースのハーモニーは息がぴったりで、

そこにピアノが単音でメロディを乗せていく。

今はあまり使われないけど、

「しびれる」という言葉がジャズから来ているという事を改めて実感。(この例えも古いかな)

このあとに演奏されたのは「ゴールデンストライカー」。

これがまた良かったな。

このトリオの別名にもなっているこの曲は、かつてMJQ(モダンジャズカルテット)の名演があり、

私のお気にいりの曲である。

以前は自分のわがままを通して、

この曲を自社の電話の保留音楽に使っていたこともある。(おっと、また脱線)

 この日のトリオがまた素晴らしかった。

鐘の音に模したメロディをジャズベースのレジェンド、

80
歳を超したロン・カーターが、深く、それでいてリズミカルな低音で弾きつないでいく。

最近ジャズが好きになってきたという友人も、

気持ちよさそうに聞き入っている。

最後の曲は何と「A列車で行こう」。

ノリのいいデューク・エリントンのビッグバンド曲がここではしっとりと落ち着いた曲で奏でられる。

このトリオの美しいハーモニーと、それでいて自由な即興性に改めて感心。

アンコール曲を挟んでの1時間余りはアッという間だった。

心地よい気持ちの高ぶりを冬の夜の外気で冷ましながら帰路についた。

「ブルーノート東京」、時々通ってみるかな。 2019/1/9




    



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